Cross Talk

  • 実験物語・Case1

Introduction

01

物語のあらすじ

コクヨではこれまで、スティックのりやテープのり、瞬間接着剤など、「貼る」技術を活かした数多くの商品を世に送り出してきた。しかしグローバルステーショナリー事業本部の商品開発チームでグループリーダーを務める大橋は、「あくまで道の途中。各商品を束ね、お客様をさらにワクワクさせられるような強いブランドを生み出す必要がありました」と語る。そんな想いのもと、コクヨのこれまでの「貼る」技術を統合したブランド『GLOO』を立ち上げることとなった。主力製品として選ばれたのは、角形スティックのり。そこで召集されたのは、前身となる角形スティックのりの開発を手がけた加藤と、コクヨの商品デザインを担当してきた内田。プロジェクトがいざスタートしたものの、その道のりは困難を極めたという。そんな中でも揺らがなかった、3人のそれぞれの想いとは……。

プロジェクトメンバー
※取材当時

  • グローバルステーショナリー事業本部
    商品開発
    グループリーダー

    大橋 隆

    2004年入社

  • グローバルステーショナリー事業本部
    生産技術

    加藤 康介

    1999年入社

  • グローバルステーショナリー事業本部
    商品開発
    グループリーダー

    内田 陽子

    2009年入社

実験グラフ

02

  • コクヨの「貼る」技術を統合したブランドを打ち立てることが決定
  • 主力製品は「角形スティックのり」に決定したが、密閉性の確保やのりの処方設計、インドの工場での開発が難航
  • 綿密にコミュニケーションをとり、粘り強く挑戦しつづけた結果、生産体制を確立!
  • とはいえ、本体デザインや販促物の制作も試行錯誤する。お客様に喜んでいただけるブランドを目指し、議論を重ねて粘り強くベストなデザインを追求する
  • 『GLOO』の角形スティックのりが誕生!
  • 『GLOO』のブランドを育てていくために、挑戦は続く

Project Story

03

Q.
プロジェクト発足の経緯は?

大橋
このプロジェクトを立ち上げたのは、コクヨの「貼る」技術を統合した強いブランドをつくることが目的でした。これまで開発してきたテープのりや接着剤などの数々の「貼る」製品は、ありがたいことに多くのお客様に愛されている。しかしバラバラに打ち出してきたため、それらがコクヨの製品だということはあまり認知されていない。「ノートと言ったらコクヨの『Campus』だよね」と言われるようなブランドを「貼る」製品でも作りたい。また「貼る」技術を統合することで、さらにお客様をワクワクさせられるような商品を生み出したい。そんな想いから始まりました。
加藤
かなりチャレンジングな試みでしたよね。
大橋
そうですね。すでに人気な商品もある以上、ブランドを束ねることで、既存の商品認知が薄れてもしかしたらお客様が離れてしまうかもしれない。それでも、コクヨをさらに進化させるためには挑む必要がある。そのチャレンジ精神がコクヨのDNAでもありますしね。

どうせやるなら新しいことをしようと、デザインオフィス「nendo」との共同開発にも踏み出しました。まず着手したのは、主力製品となる角形スティックのりの開発。ちょうどインドの協力工場で別の角型スティックのりの開発がひと段落するタイミングだったため、デザインと性能をよりブラッシュアップして、「貼る」を代表するような製品にしようと考えたのです。この選択もまたチャレンジングでしたが、チャレンジングといえばこの人しかいないだろうということで、加藤さんに声をかけました。
加藤
大橋さんからの依頼なら断る理由がないと、二つ返事で承諾しましたね。それに、もともと、インドでの角型スティックのりの開発立ち上げに協力していた立場だったので、その際の知見を活かせればという想いもありました。私が担当したのは生産技術。新たな角形スティックのりを量産するための設計や金型制作、成形、製造などを手がけました。
大橋
開発と並行して、パッケージのデザインや店頭の販促物を制作するために声をかけたのは内田さん。先ほども言ったように、nendo社との初の共同開発ということで、社内とnendo社との架け橋的役割を果たしてもらいました。
内田
プロジェクトの話を聞いて、画期的な取り組みにワクワクしました。せっかく携わるならコクヨが培ってきた技術やノウハウと、nendo社のアイデアをうまくかけ合わせたデザインにしたいと思い、挑みました。

Q.
プロジェクトを進める上で大切にしていたことは?

Q.
プロジェクトを進める上で
大切にしていたことは?

加藤
主力製品である角形スティックのりの、キャップ部分の設計にものすごく苦労しました。スティックのりといえば円筒状というイメージがあるかもしれませんが、紙の角までしっかり塗れないし、デスクから転がって落ちてしまうこともある。そんな問題を解決するのがこの角形スティックのりです。「のりを四角くしただけでしょ?」と思われるかもしれませんが、これが想像以上に設計、諸条件、生産性の絶妙なバランスを必要とするんです。とくに大変なのが密閉性を担保すること。何度も何度もトライしました。
大橋
それにインドでの開発ということで、現地のスタッフと協力しながら進めていく必要がある。コミュニケーションのとり方や工場の設備も日本とは異なるので、一つひとつの工程を丁寧に進めていきました。
内田
デザインやプロモーション面では、本当にこれで商品の価値がお客様に伝わるのか、お客様は喜んでくれるのかという問いに何度もぶつかりましたね。そのたびに他のメンバーやnendo社と何度も何度も議論し、少しずつ理想のデザインに近づけていきました。
大橋
最初から最後まで困難なことばかりでしたが、とにかく粘り強く向き合い続けること。それが一番大切だった気がします。
内田・加藤
同感です。
大橋
では、なぜそこまで粘り強く向き合うことができたのか。少し恥ずかしいですが、私の場合は「かっこよくありたい」という想いがあったからだと思います。ここで諦めたらかっこ悪い。無理だなと口にこぼすのもかっこ悪い。うまくいかなくても粘り続け、なんとかこのブランドをつくり上げたい。このプロジェクトに限らずですが、そうしたスタンスを貫いてきたことが自分を支えてくれたように感じます。
加藤
大橋さんと少し似ているかもしれないんですが、私は「できなかったら悔しい」という気持ちがモチベーションでしたね。単純かもしれませんが(笑)。ほんの少しくらい密閉できなくてもまあいいかと諦めてしまうのは簡単ですが、本当にそれで良いのかと自問する。自分が担当するプロダクトである以上、少しでも悔しさが残らないようにしたいと考えていました。

そのために大切にしていたのは、現象を数値化すること。やみくもに改善しようとするのではなく、なぜその不具合が出ているのかを把握するために、寸法や表面の粗さなど必要なデータを収集し、そこから改善策を見つけるよう徹底していました。
内田
私の場合は、冒頭でも話したようにこのプロジェクトがとても魅力的で、その意義に共感していたからこそ粘り強く向き合えたんだと思います。納得できない部分があったり、辛いことだけだったらここまで頑張れなかったかもしれません。また、「貼る」商品が進化したように私自身もこのプロジェクトを通して多くの刺激を受け取り、進化している実感があったことも大きく影響していると思います。

Q.
今後について考えていることとは?

内田
社内外問わず関係者と協議し、連携してプロジェクトを進めることで多くの学びがあり、私自身の成長につながったと感じています。そのため、今後は同様の経験を若手にもしてもらえるよう、機会を提供しサポートしていきたいです。
加藤
生産技術の視点から言うと、「コクヨにしか作れないもの、コクヨだからこその価値」を生み出していきたいです。今回、海外のサプライヤーに製造委託するのではなく、コクヨグループの総力を用いて生産することを選んだのも、そうした考えに紐づいています。コクヨの中で技術を磨き、ノウハウを未来に継承していく。それがコクヨの価値になると思いますし、国内にとどまらず世界で戦っていくことにもつながるはず。世界へコクヨ商品を広めるために、地道に自分たちの技術を磨き続けていき、コクヨならではの価値を創造していきたいと考えています。
大橋
ありがたいことに私が若手だった時代は新しい商品を生み出すチャンスがたくさんありましたが、モノが溢れる今、お客さんが求める新たな価値を生み出すことが難しくなってきています。それでも、努力次第でいくらでもチャンスを生み出すことはできるし、コクヨならまだまだやれるはず。少しでも多くの社員が「自分が手がけた商品が世に出るんだ!」という感動とやりがいを感じられるよう、サポートしていきたいです。
加藤
こうした組織全体のスキルアップはもちろん、まだまだ自分自身のスキルも磨いていきたいですね。それに、コクヨには個人の挑戦を応援してくれる文化がある。やればやるほど知見が身につく環境なので、挑戦しつづけたいです。
大橋
そうですね。お客様をワクワクさせられるような商品をもっと生み出せるように、個の力も、組織の力も高めていきたいです。