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CREATION STORY

Cross Talk コクヨの変化に挑むリーダーたち

2016年、コクヨは次の100年に向けた新たな成長を目指して、従来の「安心して使える品質の高い商品を幅広く全国にお届けする」ビジネスモデルに加え、「お客様がまだ気が付いていないニーズを見つけて解決する価値を届ける」という新しいビジネスモデルに挑戦することを宣言。2016年からの10年をホップ、ステップ、ジャンプで3年ごとに区切り、変化への取り組みを進めてきた。
最初の3年で掲げたのは、新たな成長に向けた土台づくりとしての「価値創造にこだわる自己改革」。このコクヨの変化の先頭に立ち、現場を実際に率いてきた各事業本部のリーダー3人が、このチャレンジについて振り返る。

プロフィール写真 森田 耕司

森田 耕司
Kouji Morita

ファニチャー事業本部
副事業本部長 兼
ものづくり本部 本部長
プロフィール写真 亀鶴 恭弘

亀鶴 恭弘
Yasuhiro Kametsuru

カウネット事業本部
MD本部 本部長
プロフィール写真 亀井 典子

亀井 典子
Noriko Kamei

ステーショナリー事業本部
マーケティング本部
副本部長

2016年、新たな経営計画が示されたとき、
現場ではすでに課題意識が高まっていた。

司会:本日はコクヨ各事業本部のリーダー3人にお集まりいただきました。2016年から現在までを振り返っていただくと共に、これからどんなチャレンジをしていくのか、自分自身はどう変化していくのか、などについて語り合っていただきたいと思います。 まず2016年当時は、みなさんのお仕事の現場はどのような状況だったか教えてください。森田さん、いかがでしょうか?

ファニチャー事業での新たなチャレンジと自分自身の立場の変化が重なった2016年

森田:2016年、ファニチャー事業のものづくりの現場では、ちょうど新たな課題が見えてきた時期でした。当時はデスク、椅子といった商品カテゴリーごとの部門を独立した会社に見立てて、マーケティング、開発、生産などを一気通貫で考えることで顧客価値と同時に事業収益性を高めようとしていました。実際、私自身が担当していたデスクチームでもそれが実を結びつつありましたが、一方で商品カテゴリー単位の体制や考え方の限界も感じ始めていました。そこで、もっとお客様本位で考えることでさらに高い価値を提供していこうという議論が始まったのです。

司会:お客様本位で考えるとは、どういうことでしょうか。

森田:お客様からすると、椅子を椅子だけで使うことはなく、デスクや椅子や収納キャビネットを組み合わせて空間として使います。お客様のニーズの根源は「こんな椅子がほしい、デスクがほしい」ではなく「こんな働き方がしたい、こんな環境で働きたい」ということですから、「商品カテゴリー単位ではなく、商品を組み合わせた空間単位で顧客価値をつくっていく」方向にシフトしていくことで、総合力としてもっと高い顧客価値を生み出そうという変化が生まれてきたのが、2016年ぐらいの時期でした。それに重なる形で私自身の役割範囲も拡大していきました。

司会:ありがとうございます。それでは亀井さんはいかがでしょうか?

インタビュー写真 ファニチャー事業での新たなチャレンジと自分自身の立場の変化が重なった2016年

コクヨとして、不慣れな領域である医療向け市場でチャレンジをしていた2016年

亀井:2016年というと、私は今のステーショナリー事業での役割を担う前で、ファニチャー事業に所属していました。その中でも医療市場向けに医療の現場で使用するファニチャーを提供するビジネスに携わっていたのですが、コクヨにとって医療市場はまだ歴史の浅い分野で、組織の規模も小さく、事業戦略から商品企画、販売企画、営業といったバリューチェーンを一つの部署でやっていました。

司会:当時の組織やビジネスの状況はいかがでしたか?

亀井:コクヨにとって医療はオフィスに比べると不慣れな分野でしたから、勝手が分からず苦労していました。病院や福祉施設で働く人の働き方やそこで使われるもの、課題などを自分ごととして理解するのがなかなか難しい。そのため当時は企画職も開発職も営業職も関係なく、全員でお客様の現場に行って医療現場の働き方の悩みを世の中で一番知ってるのは自分たちだと言えるようになろうという目標を掲げたんです。例えば看護師という対象を決めて、病室やスタッフステーション等、オフィスワークの比ではないくらい病院内を忙しく動き回る看護師の方々を徹底的に観察し、お話を伺って、その働き方にとことん向き合った商品を展開するといったことを始めていました。

司会:ありがとうございます。それでは亀鶴さん、2016年当時の様子を教えてください。

インタビュー写真 コクヨとして、不慣れな領域である医療向け市場でチャレンジをしていた2016年

激動する流通・小売り業界で、カウネットの新たなポジションを模索していた2016年

亀鶴:ファニチャー事業やステーショナリー事業がものづくりを基本とするメーカービジネスなのに対し、カウネット事業は商品を仕入れてお客様に販売する“流通・小売り”ビジネスです。私は入社以来一貫してカウネットのMD(マーチャンダイジング)に携わっており、市場調査、商品企画、ラインナップの検討、仕入れ、販売企画などのMD業務を担ってきました。
2016年を振り返ると、カウネットで2013年ごろから推進していたPB(プライベートブランド)商品の拡大戦略が一巡した時期です。次の新たな戦略で事業変化していかないと、厳しい流通業界でカウネットが生き残っていくのは難しいぞ、という危機感を感じていた時期でしたね。
そもそも通販などの流通業界は変化が激しくスピードも速い。PB商品の拡大戦略は一定の成果をもたらしましたが、それだけでは差別化できなくなっていくことも分かっていました。2016年は、次の新たな付加価値を構築し、カウネットのポジショニングを変化させていかなくてはと考えていました。

インタビュー写真 激動する流通・小売り業界で、カウネットの新たなポジションを模索していた2016年

お客様の変化に合わせて最適な価値を提供し続けるためにチャレンジした3年間。

司会:2016年当時の皆さんの事業部、そして皆さん自身の状況がよくわかりました。現場では既に課題意識を持って、新たな挑戦が始まっていたということですね。 それでは次に、2016年以降現在に至るまで、リーダーである皆さんはどのような組織変化に取り組んできたのか、そしてどのように自分自身を変化させてきたのかを教えてください。

バリューチェーンのつながりを強化し、
総合的な提供価値の向上に挑んだ3年間

森田:私は2016年にデスクチームの責任者を卒業して、ものづくり本部の副本部長になりました。ファニチャー事業のものづくり全体を見る立場で、生産管理や品質保証、営業との連携などマネジメント範囲が拡大したのですが、個人的にはこの変化に対応するのがほんとに難しかった。なんせやったことない領域をマネジメントするのですから。そこである意味開き直って「これは何? これはなぜこうなってるの?」と、素人の視点でおかしいと思うことをメンバーたちと議論していったら、逆に従来の経験や常識にとらわれ過ぎていた現場が変化を起こし、良い成果が生まれていった感覚があります。

亀井:これは森田さん個人に限った話ではなく、バリューチェーンをつなげることで総合的な付加価値を追求する役割がリーダー全員に求められた時期でもありましたね。

森田:そう、会社合併という変化の一環で、従来の組織体制では解決できなかった課題を、一体化したバリューチェーン全体が密に連携することで解決していこうという動きでした。

司会:ありがとうございます。それでは亀井さんは、医療市場向けのビジネスをする組織を率いる立場で、どのようなことをしていたのでしょうか?

インタビュー写真 バリューチェーンのつながりを強化し、総合的な提供価値の向上に挑んだ3年間

新しい分野では特に“待ち”の姿勢ではうまくいかない。
そのことを言い続けた3年間

亀井:2016年から2018年にかけては、医療市場向けビジネスへの取り組みが徐々に定まってきた時期ですが、そこで最も苦労して注力したのは、メンバーたちの新たなアイデアを引き出すマネジメントの部分でした。コクヨにとって成長過程にあった医療向けビジネスでは、次にどんなチャレンジをするか、比較的自由な発想が求められました。でもメンバーの中には、次にやることを決めてください、そうしたらそれをきっちりやります、という思考の人もいます。しかしそれではうまくいかない。みんなでアイデアを出し合って、みんなで何をやるべきかを考えて動かないといけない。「あなたはどう思う? 何をやるべきだと思う?」という会話をしつこいぐらいに繰り返して、メンバーへの意識付けをしていきましたね。

司会:その効果は表れたのでしょうか?

亀井:はい。上の意向に従うだけでなく、自ら考えて今の事業やビジネスモデルにこだわらない新たなチャレンジをするという精神が少なからずメンバーたちに根付いていったことが、今のコクヨの医療市場向けビジネスの基礎を作り上げることにつながったと思います。

司会:ありがとうございます。では亀鶴さん、カウネット事業はいかがでしょうか?

インタビュー写真 新しい分野では特に“待ち”の姿勢ではうまくいかない。そのことを言い続けた3年間

あらゆるお客様の困りごとを拾い上げ、
商品に反映させてきた3年間

亀鶴:先ほど申し上げたように、カウネット事業のこの3年間はPB商品拡大戦略から新たな戦略への転換、つまり付加価値型商品への転換を模索した3年間でした。単に安くて良い商品ではなく、いかにお客様の困りごとやお客様自身もまだ気が付いてない課題を見つけて解決する商品を提供するか、ということです。だからカウネットのMDは全員でお客様を訪問し、業務のシーンで実際にどんなことに困ってるか、徹底的に情報収集し、それを商品開発に活かしていくという活動を推進しました。たとえばスティックのりであれば、個人向けなら「デザインがかわいい、色付きで塗った場所が見やすい」ことが価値となりますが、カウネットが向き合うBtoBでの使用シーンを見ていくと、1日1,000通の封かん作業を行うお客様がいらっしゃる。そんなお客様にとっては「のりが最後まで崩れず気持ちよく貼れる」ことが価値となるわけです。そこで、耐久性のある硬めの「のり」を材料から開発し、メーカーと一緒に商品化するといったことを行なっていきました。

司会:そうした困りごとは業種によって様々ですから、それを一つずつ収集していくのは大変な労力なのでは?

亀鶴:その通りです。だからお客様を直接訪問するだけではなく、Web上に同様な困りごとを持つお客様が集まるコミュニティを作り情報を取り入れる等、手法は更新させながらも、とにかく付加価値型へと自分たちのお客様との向き合い方を変化させていった3年間でした。

あらゆるお客様の困りごとを拾い上げ、商品に反映させてきた3年間

10年後に向けて、コクヨと自分が
これからチャレンジしていくこと。

司会:皆さん、ありがとうございます。ともすれば外部からは安定した老舗企業というイメージを持たれるコクヨですが、内部の皆さんの意識は決してそうではなく、あくまでもチャレンジャーとしての意識を持ち続けていることがよく分かりました。それでは次に、今後リーダーとしてそれぞれ携わる事業や組織でどのようなチャレンジをしていくのか、お聞かせください。

インタビュー写真 10年後に向けて、コクヨと自分がこれからチャレンジしていくこと。

お客様それぞれの多種多様な働き方に寄り添い、
最適な提案ができる仕組みづくりへ

森田:オフィス業界では、働きやすさや快適性を求めるリビングライク化が進んでいます。従来の金属製のデスクや椅子を作るメーカーだけではなく、木製家具メーカーも新たに参入してくるでしょう。そこでは、いかにこれまでオフィスで培った経験やノウハウで差異化していくかがカギを握ります。また、働く場所もシェアオフィスや自宅にまで広がっていきますから、そうした環境、ニーズに応える多種多様な商品を提供できる仕組みづくりも必要です。その答えの一つとして、現在、商品のユニット化という方向にチャレンジしています。テーブルであれば、天板とフレームと足をそれぞれユニット化してどれでも組み合わせられるようにすれば、限られたユニット数で何千通りもの商品が提供できる。そういったユニット化を推進する組織も今年発足させました。

商品カテゴリー単位のものづくりから、
あくまで使う人を中心に置いたものづくりへ

亀井:私は2018年からステーショナリー事業のマーケティング本部にいますので、ステーショナリー事業の未来についてお話します。企業が一括してオフィスの備品を購入するBtoBの事業も行う一方、今は自分の働き方に合わせたステーショナリーを自分で購入するという傾向が強まってきており、BtoCの事業にも注力しています。そこでは従来のノート、筆記具、ファイルといった商品カテゴリー単位ではなく、あくまで使う人を中心に置いて、その働く環境や学ぶ環境がどう変化していくかを見極め、それに合った商品を提供していく必要があります。そこでマーケティング本部では、誰々は徹底的に働き方改革の動向に詳しい、誰々は中高生の学び方に一番詳しいなど、それぞれが何かのスペシャリストである組織を目指そうとしています。

数十万のお客様とつながりから生まれる価値を
磨きながら、Webでの戦いへ

亀鶴:通販業界の環境変化はこれからも激しくなるでしょう。特にWebが中心になってきてからは、Web特有のカテゴリーキラーが現れたり、従来ライバルではなかったBtoCの通販業者がBtoBの世界に参入してきたりというのが今の状況です。そこで私たちが大切にしなければならないのは、コクヨならではの価値です。この3年間やってきた、お客様の困りごとをつかみ、それに応える商品を生み出していくという活動をキーにして、カウネットのお客様といかにつながり、それを強化していけるか。そのうえで、従来のカタログ中心ではなくWebならではの戦い方を身に着け、Webをカウネットの武器として使いこなしていくにはどうすればいいか。そうしたチャレンジがコクヨならではの価値を作り上げる。そのための組織や体制づくりを進めていこうと思っています。

今思い描く、10年後のコクヨ、
そして10年後の自分の姿

司会:最後に、10年後を見据えて、個々人の想いの部分を教えてください。

森田:私個人としては「所有する喜び」を感じられるものづくり、商品の提供を目指したい。モノの価値には「便利、使いやすい」といった機能価値、「かわいい、きれい」といった感性価値がありますが、もう一つ「思いを込められる、所有する喜び」の感情価値のある商品を大切にしていきたい。近年の何でもシェアする動向とは反するかもしれませんが、ものづくりに長年携わってきたプロとしては、それを忘れずにいたいですね。

亀井:事業の方向性としてはグローバルの拡大が重要なテーマになっていますが、それは私自身の想いと重なります。2年ほど前にステーショナリー事業に異動してから、今更ながらステーショナリーの魅力、可能性を実感しています。単なる仕事道具、勉強道具ではなく、人々の人生に寄り添い、手助けする価値。このステーショナリーの持つ魅力を、もっと広く世界に広めていけたら素晴らしいと思っています。

亀鶴:もっと事業部間の、バリューチェーンとしてのつながりを強化していくことで新たな価値を創造していきたい。働く空間と、学ぶ空間と、生活する空間があるというのはステーショナリーもファニチャーもカウネットも同じ。そこに新しい価値を提供していくには、メーカーであるステーショナリー事業とファニチャー事業、流通・小売りのカウネット事業が融合して一体化することで生まれる新しい変化が、絶対に必要になるはずだと思っています。

司会:皆さん、自分の率いる事業の未来、コクヨの未来について明確なビジョンをお聞かせいただきました。そのビジョンが実現した未来のコクヨの姿を楽しみにしたいと思います。本日は貴重なお時間をいただき、そして貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。